絶対領域
せーちゃんもあず兄も、さすがにこの状況で口論するほど、空気の読めないバカじゃない。
即座に臨戦態勢に入った。
「なんだてめぇら」
「新人の調教しに来てやったんだよ」
「そうそう、優しい先輩だろ?がははっ」
あず兄が睨みを利かせても、ガラの悪い連中は下品に笑い飛ばすだけ。
「調教が必要なのは、てめぇらのほうじゃねぇの?」
「いっちょ前に威勢はいいな、クソガキが」
せーちゃんが毎日無自覚で磨いてる毒舌スキルだって、物ともしてない。
カッとなるどころか、どこか楽しそうだ。
……そうか、これが。
噂の、新人いびり。
奴らにとっては単なるお遊びであり、ゲーム。
どんなに挑発したり反抗したりしても、新人相手に倒されるわけない、と高をくくっているんだ。
その証拠に、1週間前よりもさらに多い人数で来襲して、決して敗北しないよう保険をかけている。