絶対領域
「……ん?そこの女、どこかで……」
ガラの悪い連中のうちの1人が、私を舐めるように凝視する。
「お前らごときが姉ちゃんを見てんじゃねぇぞ!」
「こいつに手を出してみろ。どうなっても知らねぇぞ」
せーちゃんとあず兄が、目の色を変えて憤る。
そんな2人をよそに、「あっ!思い出した」と冷ややかな笑みを漏らした。
「お前、この間狙ってた新人と逃げた、あの女じゃねぇか」
先週の鬼ごっこに、こいつも参加してたのか。
これは厄介だな。
女の子には油断してくれると思ったんだけど、あの笑みから鑑みるに、そうもいかないようだ。
こちらが3人に対して、敵は20人。
しかも、逃げ道は塞がられ、敵の手には鉄パイプがある。
せーちゃんとあず兄はきっと、私を守ろうとしてくれる。
でも、私を庇いながら戦っては、本当の実力を発揮できない。
こちらに分が悪いのは、明白だ。