絶対領域
これじゃあ、多勢に無勢。
敵の思うつぼだ。
今日までずっと2人が私を懸命に守備してきたのは、こういう緊急事態に遭った際に、即座に対応するためだけれど。
いつも以上に気を張っている2人じゃ、私に被害が及ぶたびに集中力を乱してしまうだろう。
私がお荷物になって、こんなところでこんな卑怯な奴らに、神亀に黒星を刻んでしまうの?
……そんなの、私が許さない。
絶対に、させない。
せーちゃんとあず兄なら、私がいなければ、こいつらを簡単に倒せる。
が、最悪なことに、守る対象である私がいる。
それなら、こちらも保険をかけよう。
「あの……見逃してくれませんか?」
できるだけか弱い素振りをしながら、ためらいがちにお願いする。
「ね、姉ちゃん、何言って……!?」
「俺たちのそばにいろ!」
動揺する2人の気持ちもわかるけど、ごめん。
今は、聞けない。
味方を無視して、一歩、また一歩とガラの悪い連中に近づいた。