絶対領域
鉄パイプを振り回してもぎりぎり届かない距離で、静止する。
「私なら何をされてもかまいません。ですが、どうか、あの2人は逃がしてはもらえませんか?私の大事な人なんです……っ」
うるうると瞳を潤ませて。
きゅっと胸元で両手を合わせて。
あとは少し体を震わせれば、完璧。
「ほう……自分を犠牲にするとは、泣けるねぇ」
「本当に何してもいいんだな?」
……ほら。
騙されてくれた。
「っ、は、はい……ふ、2人が助かるのなら、私は……っ」
「よく見りゃ、すんげぇ可愛いじゃねぇか。こんな子を好きにできる機会なんざ、そうそうねぇぞ」
ガラの悪い連中の1人が、くい、と私の顎を持ち上げた。
にんまり、と不細工な顔面を緩められ、気分を害す。
よく見りゃ、の一言が余計だが、今はそんなことどうだっていい。