絶対領域
低劣な集団で助かった。
易々と演技に引っ掛かってくれる。
目の前の不良が、私の顎から乱暴に手を放すと、せーちゃんとあず兄を一見した。
「可愛い子のお願いとありゃ、拒否するわけにはいかねぇな」
嘲笑いながら、後方の道を塞いでいる連中を脇にずらさせた。
どうやら私の要望通りに、ちゃんと逃がしてくれるみたいだ。
「そこの女に感謝するんだな」
「っ、俺たちは逃げたりなんか……!」
「せーちゃん、やめて」
今にも殴りかかりそうなせーちゃんの肩に、そっと右手を伸ばす。
2人のそばに戻り、しゃがんだ。
せーちゃんの肩に置いてる右手に、グッと力をこめる。
「大丈夫だから、今は私にこの場を任せて」
「だが、お前一人残して行くわけには……っ」
「私を信じて、あず兄」
わなわなと震えるくらいきつく握りしめられたあず兄の拳の上に、私の左手を優しく重ねた。