絶対領域




2人の双眼には、ずっと迷いがあった。


けれど、今。

ようやく覚悟を決めて、私を真っ直ぐ捉えた。




「……本当は一人になんかしたくねぇ。だが、この作戦じゃねぇと、お前に傷一つつけずにあいつらから守ることはできねぇ」


「俺だって、嫌だ!俺たちだけでもあいつらを倒せる!……けど、姉ちゃんを守り切れるかどうかって考えたら、わからない」



今度は2人が、私の手に触れた。

右手はせーちゃんと、左手はあず兄と、繋がる。



「だから、今回は、萌奈を信じる」


「すぐ戻ってくるから!」



2人は覚悟を決めたけれど、今もなお迷いを抱いたまま。


私が何を言っても、何をしても、2人から憂いを消し去ることはできない。



それでも、私の意志を尊重して、託してくれる。



「ありがとう。待ってるね」




一瞬、ぎゅっと手を握られた。


2人の熱がじんわりと伝わってくる。



今日は空が曇っていて、この路地は一段と薄暗い。

ここに光は差さない。


代わりに、この熱が、私を灯してくれる。




< 99 / 627 >

この作品をシェア

pagetop