絶対領域
2人の双眼には、ずっと迷いがあった。
けれど、今。
ようやく覚悟を決めて、私を真っ直ぐ捉えた。
「……本当は一人になんかしたくねぇ。だが、この作戦じゃねぇと、お前に傷一つつけずにあいつらから守ることはできねぇ」
「俺だって、嫌だ!俺たちだけでもあいつらを倒せる!……けど、姉ちゃんを守り切れるかどうかって考えたら、わからない」
今度は2人が、私の手に触れた。
右手はせーちゃんと、左手はあず兄と、繋がる。
「だから、今回は、萌奈を信じる」
「すぐ戻ってくるから!」
2人は覚悟を決めたけれど、今もなお迷いを抱いたまま。
私が何を言っても、何をしても、2人から憂いを消し去ることはできない。
それでも、私の意志を尊重して、託してくれる。
「ありがとう。待ってるね」
一瞬、ぎゅっと手を握られた。
2人の熱がじんわりと伝わってくる。
今日は空が曇っていて、この路地は一段と薄暗い。
ここに光は差さない。
代わりに、この熱が、私を灯してくれる。