Cosmetics
その日は仕事が手につかなかった。
頭の中で、海音のことを考えては打ち消し、考えては打ち消した。
ずっと好きだった男とデートできるなんて、一体誰が予想できただろう。
こんなことなら、もっと派手な下着をつけてくるんだった。
短い頭をくしゃっと握って、デートの後のことを想像する。
海音は、女を抱く時にどのように抱くのだろう。
きっと、情熱的なデザインを書く海音のことだ。激しく、情熱的な一夜をプレゼントしてくれるに違いない。
あんまりにほまれが仕事に手がついていないため、上司に指摘をされてしまったことは言うまでもない。
定刻が過ぎ、飛び去るようにほまれは職場を後にした。
ビルを飛び出すと、海音から連絡が入った。
「現地で待ち合わせね。東急プラザのTWGの紅茶売り場の前で」
早速、場所を検索して、電車に飛び乗る。
心臓がバクバクいって止まらなかった。本当に、好きな人と一緒にデートできるのだと思うと、夢見心地であっても仕方がない。
ほまれがTWGに到着して、二十分後に海音は到着した。
「じゃあ、行こっか」
海音があまりにも自然に手を差し出してきたので、ほまれは一瞬戸惑ってしまった。
「えっと……」
「嫌かな?」
「いやじゃ……ないです」
顔が真っ赤になっているのを感じた。
手、汗ばんでないかな。意外に、手小さいんだな。私の手、ちょっとゴツゴツしてるんだけど、嫌じゃないかな。
エレベーターの中で密着すると、香水のいい香りがした。