Cosmetics
今週の休日は、中学時代の友人である立川ほまれと一緒に美術館に行くという予定を立てていた。
夜からデートも入っているが、ほまれと盛り上がれば、キャンセルしてもいいかという程度の相手である。
「明日香ちゃんって、相変わらずだよね。なんか、あんまり変わってない。そのsyuuuemuraのリップはずっとつけてるよね。ちょっと紫っぽい色を見ると、明日香ちゃんって感じがする」
「そう?あんたは本当変わったけどね。真っ赤なリップ似合ってるよ」
当時一緒にいた時には、地味なメガネ癖っ毛少女だったほまれは、社会人になって劇的な変化を遂げた。
明日香は、飽きっぽい性格をしてはいるものの、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いというところは変わらずにいる。
飽きるのもずっと好きでいるのも一貫はしているかもしれない。
打って変わって、ほまれの場合、大人しい見た目に反して、中身は大胆なところもあったので、中身に外見が追いついてきたと言った方が正しいのかもしれないが。
最近は、付き合い始めたドラマーの彼氏とよろしくやっているということだ。
「明日香ちゃんは、彼氏とかいないの?」
「うん。不特定多数。好きだけど、ほまれほどの情熱を持って恋愛はできてない」
「そ、そんな情熱だなんて……」
「だって、週のほとんど一緒に暮らしてるからって、今度同棲するんでしょ?」
「ま、まあ。そ、そうだけど。向こうが一緒に暮らしたいって言うから。私も、一緒に暮らしたいし」
顔を真っ赤にさせて、嬉しそうに報告してくるほまれを見ていると、自分にはそういった感情は男に対して持ち合わせていないと感じる。
かといって女性に対して、恋愛感情を持っているかというと、そうではないのだから、自分はどこかおかしいのだろうかと不安になることもしばしばだ。
これといった対応策がなければ、結婚どころか同棲だって難しいだろう。
結局、彼氏とこの後約束があるからとほまれはお茶をした後、帰ってしまった。
「のめり込んでるなあ」
羨ましさ半分、心配半分といった様子で明日香は呟いた。
今まで、のめり込んだ恋愛をしたことがあっただろうか。
今まで、彼氏に振り回されるといったことがあっただろうか。