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私にバレないように、何をしているの。
声を荒げて問いただすこともできず、呆然と夫の姿を眺めていた。
一体、いつから邪魔だったのだろう。
やはり、私と結婚したのは、政略結婚だったのだ。
「いいですね!羨ましい!」
「憧れます!」
「そんな風にどうやったらなれますか?」
本当の私も知らないで、どうしてそんな風に無責任に言えるの。
コメントを書いている人は、麗奈の気持ちなど知る由もないのだから、そんな風に言ったところで、無意味なのはわかっている。
あなた自身は大したことないですよね。
無機質なコメントが、麗奈の心を再びえぐった。
いくら価値の高い商品で取り繕ったところで、本当の麗奈には実家が金持ちだということくらいしか取り柄はないのだ。
「麗奈、何しとん?」
いつの間にか電話が終わったのか、慶一朗が心配そうな表情で泣いている麗奈のことに心配そうな表情を浮かべている。
「慶一朗さん……」
「なんかあってん?」
「いいんです。私、慶一朗さんが浮気してても……」
お金で繋ぎとめておけるのであれば、歪んでいてもいい。
情けないが、今これが麗奈が慶一朗にできる精一杯だ。
「何とんちんかんなこと言ってるんや」
「だって……今、奥さんにはバレないようにって電話で言ってたじゃないですか」
言葉に出したら、もっと悲しくなった。
「ああ、電話聞こえてたんか?」
「今日だって、シャワー浴びて帰って来るし、一緒に住んでるところ以外にマンションは借りてるし、セックスだって、私だけ気持ちよくて終わってしまうし。本当は、もっと強引に来てくれても大丈夫なのに、大切に扱われてるのは嬉しいけれど、浮気されるなんてやっぱり悲しいの。慶一朗さんの本音が知りたいのに、言ってくれないから不安なの。私ばっかり慶一朗さんが好きなんだわ。浮気してもいいなんて嘘。本当は嫌」
ああ、我慢していた分、支離滅裂な言葉となって言葉があふれ出てしまった。
こんなんでは、呆れられてしまう。
嫌われたくないのに。
どうして、ちゃんと話ができなかったのだろう。
これでは、自信がないのを八つ当たりしているだけになってしまう。