私、田口まりなは先生と不倫しています。

春の明け方はまだ寒い。


目が覚めるとベンチの上でうずくまっていた。




携帯を開くと先生から不在着信が来ていた。





でも、私は折り返して連絡などしない。




先生を忘れると決めた。




公園を出ると先生とななせと村上さんと行った高級そうなお蕎麦屋さんが見えてきた。



さらに進むとハートのイルミネーションが飾ってある。

さすがに春だから点灯はしていないがカップルは研修に来た時よりも増えていた。




「もう一度先生と来たかったな」




と独り言をぽつりと言うと


最後に研修先のホテルへ寄った。


ホテルの前を歩いていると


「あれ？あなた…」


そう話しかけてきたのはホテル先の従業員。



「私ですか？…」



「あなた、確か研修で来てた子じゃ？」


「なんで、知ってるんですか？」



「いや、私清掃係で夜間も巡回しててね。」



「そうなんですね」



「確か２日目だったかしら。女の子が一人倒れちゃったじゃない？その時、あなたもう一人お友達とその子のところに何か持って行ってたよね？」



「懐かしいですね。何で知ってるんですか？」


「ちょうど、掃除していてね。あなた達が帰ったあと、先生？すごく嬉しそうにあなた達が持ってきてくれたごはん抱きしめてたわよ」



従業員は私に裏側を教えてくれた。

二人して笑った。


「ごはん抱きしめてるとか笑いますね」




「まあ、知らない人からしたらおかしい人よね。でも、すごくいい先生そうね。そうやって、何も言わないでも生徒が先生の分まで買ってくるなんて。人気だったの？」