私、田口まりなは先生と不倫しています。
一瞬香るあの香り。
忘れもしない。
先生の香水の香り
後ろを振り返ると
先生は奥さんらしき人と笑いながら話していた。
目をゆっくりと閉じる。
「先生、久しぶり」
思い切って話しかけてみた。
「誰?」
その言葉に
あぁ、記憶から消してるんだ
と思った。
「誰なの?」
と先生の横の女性は不思議そうな顔をしている。
「あ、高校時代に先生にお世話になった田口まりなです。」
「お!まりなか、だれかわかんなかったわ」
また、うそをついている。
相変わらず詰めが甘い。
「じゃね、先生。また、ななせと遊びに行くね」
と別れようとした時
「ママ、遅い」
と我慢できなかったのか二人が走ってくる。
必死に追いかけてくるパパ。
「こら、走ったら危ないでしょ」
「ごめんなさい」
「なんだ、まりな。結婚したんか?」
「うん。まあね、20歳の時にね」
「こちらは?」
とパパ。
「ああ、高校の時の先生。部活の顧問と生物持っててくれてたの」
「へーそうなんだ。自分、夫の近藤かずまって言います」
なんだか、私からしたら複雑な絵ずらだがこれで、私も先生と普通に話せるようになったという嬉しさもあった。
「2人もあいさつして」
「かれんでしゅ」
「かりんでしゅ」
「いつの間に子供まで。変わるもんだな」
「三才の双子なの」
「かわいいな。お前の子供とは思えやんわ」
「相変わらず失礼だね」
「じゃあ、また」
別れた。