マイ・フェア・ダーリン
コマ送りくらいのペースで、私は帰り支度をしていた。
のろのろのろのろ。
帰りたくない。
食事なんて行きたくない。
今日ばかりは永遠に残業していたかった。
「とにかく、飲み過ぎないように気をつけてくださいね。何かあったらすぐ電話ください。駆けつけます!」
「正直に話して謝るの。とにかくひたすら謝る。それしかないわ」
左右から浴びせられるアドバイスに、力なくこくこくとうなずいた。
昼休みに下柳を見かけて、私は食事を断った。
あれは本当に配車担当みんな宛てであって、そんなつもりではない、と。
ところが、
「彼氏でもいるの?」
「いません」
「だったら食事くらい付き合えるだろ」
「いや、あの、ですからそういうつもりではなくて」
「気を持たせるようなことした責任は、そっちにあると思うけど? とにかく、今日の仕事終わりで迎えに行くから、話し合いはそのときに」
と、結局事態は変わらなかったのだ。