あやかし神社へようお参りです。
「あ、巫女のお姉ちゃん!」
突然そんな声がして振り返る。
野球帽をかぶった小さな男の子が立っていた。何度か社頭で遊んでいる姿を見たことがある。
「こんにちは、厄除けのお札貰いに来たんだけど、三門兄ちゃんいる?」
駆け寄ってきた男の子は、私の隣に立っていたケヤキを不思議そうに見上げながらそう尋ねる。
「社務所にいるよ」と指させば、男の子は分かった! と元気に返す。
そして続けざまに「隣のキレイなおねえさん、三門兄ちゃんのコイビト?」と尋ねる。
そんな無邪気な質問に、思わず目を見開いた。
はは、と楽しげに笑ったケヤキは、男の子の前にしゃがみ込むと、その頭を撫でた。
「すまんなあ、人の子。私はおねえさんでも恋人でもないのだ」