あやかし神社へようお参りです。


 ケヤキの低い声に「え、おにいさん!?」と男の子が仰天する。

 しかしすぐに順応したのか、「巫女のお姉ちゃんより美人だね!」とあどけない笑みを見せると、手を振りながら走って行った。


 最後のひとことに、思わず顔が強張る。

 たしかに女の私が見てもケヤキは美人だと思うし、小さな子が言うことだから悪意はないと分かっているんだけれど。


 「麻どの、子どもの言うことです。それに我々のような者たちは、人間を魅了するために見た目が良く作られるのですよ」


 私を励ますためなのか、ケヤキが慌てて口を挟む。

 なんだか慰められると余計に悲しくなる気がする。


 「それにしても、今はおもてらのお社が開いている時期なのですね」


 わざとらしく突然話題を変えたケヤキに、苦笑いを浮かべた。
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