あやかし神社へようお参りです。


 彼の心遣いに申し訳なさが募る。

 気を取り直して「はい、一昨日から」と返事をすると、ケヤキは少し安心したように微笑む。


 「人の子が私の姿が見えたので、少し驚きました」


 そう言えば確かにそうだ。普段なら見えるはずのない姿を見ることができ、言葉も交わしていた。

 ふと、ババに教えてもらったことを思い出した。おもてらのお社は昼夜を問わず、人も妖も参拝できるお社なのだ。


 「何度か開門祭に来たことがあるんです。あれはいいものですね」


 懐かしそうに、でもどこか寂しさを含んだ表情で呟くケヤキ。なんだか胸がざわざわして、慌てて口を開く。


 「……来年も再来年も、あります」

 「ええ、そうですね」


 穏やかに笑うケヤキの横顔を見ているとやはり胸がざわついて、妙に引っかかった。

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