あやかし神社へようお参りです。


 「いつまで布団に包まってんだよ、もう夜中だぞ? さっさと起きろ!」


 どこか楽し気に私から布団を奪う葵に頭を抱える。

 葵や妖にとっては真昼の感覚なのだろうけれど、人間の私にとっては眠る時間だ。

 布団に残る温もりにまたうつらうつらし始めれば、葵に両腕を引っ張られる。


 「ほら、上着着て、靴下履いて! さっさとしろよな」


 てきぱきと布団をたたんだ葵は、障子を勢いよくスパンと開けた。


 一気に部屋が冷やされて、ぶるりと体を震わせる。

 「葵、お願いだから閉めて」と言おうと顔をあげたその時、ガラス越しにちらりと見えた白銀に感嘆の声をあげた。


 「雪……」


 通りで寒いわけだ、とダウンコートを手繰り寄せて腕を通す。

< 275 / 465 >

この作品をシェア

pagetop