悪いオトコ
2
……誘いはいつも彼の方からだった。
こちらからの出方を探り当てたように、それはいつも絶妙なタイミングで仕掛けられた。
「……そろそろ、俺に会いたくなったでしょ?」
『そんなわけない』と喉元まで出かかる。
「俺は、君に会いたかったよ…」
なのに甘い台詞に、言いたかった言葉はあっさりと呑み込まれてしまう。
電話越しでも明らかな、ごくりと鳴る喉に、
「…ふふっ」
と、彼は笑って、
「……君も、俺に会いたかったんだよね」
私をいとも簡単に丸め込む。
「どうして……」
疑問だけが口をついて出るのに、
「……考えたらダメだよ、紗耶ちゃん」
言って、
「……俺を、ただ好きでいればいい」
まるで呪文か何かのように、私の思考を奪い去る。
こちらからの出方を探り当てたように、それはいつも絶妙なタイミングで仕掛けられた。
「……そろそろ、俺に会いたくなったでしょ?」
『そんなわけない』と喉元まで出かかる。
「俺は、君に会いたかったよ…」
なのに甘い台詞に、言いたかった言葉はあっさりと呑み込まれてしまう。
電話越しでも明らかな、ごくりと鳴る喉に、
「…ふふっ」
と、彼は笑って、
「……君も、俺に会いたかったんだよね」
私をいとも簡単に丸め込む。
「どうして……」
疑問だけが口をついて出るのに、
「……考えたらダメだよ、紗耶ちゃん」
言って、
「……俺を、ただ好きでいればいい」
まるで呪文か何かのように、私の思考を奪い去る。