悪いオトコ
きっと借りておきながら返すことはなくて、だんだんに借金がかさんでいく手口なんだとばかり思っていた。

それなら、こちらも別れやすくなるはずと踏んでいたのに、

彼は、本当に次回にはお金を返してきた。

そうなると、本気で意味がわからなくなってくる。

「…じゃあ、今度は五千円貸してもらってもいい?」

それ以上の食事代を払っておいて、そう言ってくる彼の心理がまるで読めなかった。

毎回雰囲気のいいお店に連れて行って、いくら私の分は出すからと言っても、

「女の子に出させるのは性に合わないから」

と譲らず、「俺の度量だから、これくらいは見栄張らせてよ」と押し切られていた。

なのに、お金を貸すなんてと、

「……こんなことして、どうするんですか?」

訊いた私に、

「別に、どうも…」

と、彼は答えた。

「前にも言ったように、会うためのただの口実なんだから、どうしようとも思ってないよ」

彼の言葉に「だけど……」と言いかけて、一度は口をつぐんで、

「だけど、普通は借りても返さなかったりとか……」

どういうつもりなのか確かめてみたくなった。

< 15 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop