悪いオトコ
「もう半年もたってるのに、おかしいでしょ?」

いつしか彼との付き合いは半年が過ぎた。

深く思い合えているわけでもなく、浅く何を思っているのかも知り得ない関係……緊張が解けて敬語では話さないようになっても、彼との付き合いはそれ以上へは進まなかった。

「……おかしくないよね? 俺は、ちゃんと紗耶ちゃんを好きだし」

「……好き?」

言葉尻をとらえる。

「……好きなんかじゃ、ないでしょう……」

呟いた私の腕を引いて、

「好きだよ。なんで、好きじゃないだなんて思うの?」

耳元近くで囁きかける。

そういう上っ面な行動が……と言おうとして、

「……別に、なんとなく」

抱かれた腕の中で言う。

きっと、言っても仕方がないことくらいはわかっていた。

彼には私の言葉は響かず、間柄も進展なんかしない。それならば、よけいなことは言わずにおいた方が、気持ち的には楽だった。

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