悪いオトコ
「…ねぇ君は、俺を好きなの?」

ーー飲んでいるカウンターバーで、唐突に尋ねられて、「えっ…?」と聞き返す。

まさか彼の方から気持ちを確かめられるなんて、思ってもみなかった。

この人が相手にどう思われてるかを気にすることなんか、ないだろうと考えていた。

「……どうして、答えられないのかな?」

彼が首を傾げて見せる。

「……。……どうしてって、」

薄笑いの浮かぶ顔を見つめながら、言葉を呑む。

「俺は、君のことが好きなのにね」

そんな台詞をさらりと吐くと、

「君には好かれてないなんて、寂しくなるな」

カウンターに片手で頬づえをついて、私の顔をじっと見返した。


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