悪いオトコ
「……紗耶ちゃんは、可愛いよね…」

甘い囁きとともに、胸元にキスが落ちる。

「…ん」

重なる身体に籠る熱に反して、彼の言葉は口先だけで冷めていくようにも感じられた。

「……好き?」

問いかけると、

「……うん、好きだよ」

彼が答える。


……好きなんかじゃない、きっと。


言いかけて、呑み込む。

熱を孕んで火照る身体を抱いて、

「……好きだよ」

同じようにもくり返して、

「紗耶ちゃんのことが……」

そう彼は、まるで取って付けたようにも加えた……。

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