悪いオトコ
……抱いた後で、再びタバコに手を伸ばす彼に、

「…ねぇ、こうなってよかったの?」

訊いてみる。

「いいも悪いも……」

答えて、

「……君さ、俺の心を読みすぎだよね」

くくっと短く笑った。

「俺は、紗耶ちゃんが思ってるほど、ドライじゃないから」

吐かれた煙が顔にかかる。

「ドライだと思うけど。あなたはいつも関係に一線を引いてるように見えるし」

鼻腔につくマルボロの薫りを、手で軽く払って口にする。

「……引いてるのは、そっちの方じゃないの?」

相変わらずはぐらかされて、どうせ答えてなんかくれないとは思ってたけれどと、

だんまりを決め込んでいると、

「……俺は、本気。何度もそう言ってるけどね」

言って、タバコを咥えていた唇から離した。

< 25 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop