悪いオトコ
「ただ君が嫌なら、付き合いをやめてもいいけどね」

「……本気で好きだなんて言いながら、簡単にやめられるんじゃない」

ため息をついて、皮肉を言う。

「あなたは、いつだってそう。口先ばっかりで、心は許さない」

「……心ねぇ」

言って、

「心を許したら、なんかいいことでもあるの?」

たいして興味がなさそうにも続けた。

「心も許さない人なんて、好きにはなれない…」

少しくらいは、彼の本心が覗けたらと思う。だけど、

「……酷いなぁ、俺はこんなにも君を好きなのにね」

本音の知れない薄い笑みに、

「……嘘つき!」

感情的に言葉を投げつけて、

「……嘘よ! そんなの、嘘……!」

声を荒げると、

「ああ、嘘だよ」

真顔でじっと見つめて、

「俺の話したことは、ぜぇ〜んぶ嘘……」

彼は、わざと感情を逆撫でするようにも話した。


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