悪いオトコ
……どうして、急にそんな顔するのよと思う。

まるで自分が彼を責めたみたいにも感じて、居心地が悪くもなるのに、

「……君も、喰えないよね」

と、ふっと微笑った。

「…え? 喰えないって…?」

そんな風にも言われる意味がわからなかった。

「俺が悪い奴だと思ってるなら、付き合わなければよかったのに」

「…え、」

当然のように突きつけられて、言葉に詰まる。

「それでも付き合っておいて、よく言うよね」

彼は言って、

「……ほんと喰えないって、」

苦々しげに眉根を寄せると、

「……紗耶ちゃん」

私を名前で呼んで、するりと髪を撫でた……。

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