悪いオトコ
ああ……と、思った。

そうだ、この人は誰よりも傷つくのを恐れていて、本質は打たれ弱く脆い……。

自分の弱さを隠すために、本気でないように装い恋愛を楽しんでる振りをしていたんだ。

どうせ相手にいつか逃げられるのならと、ただ楽しむ素振りだけを見せて……。

嘘で塗り固めて、身を守ろうとしていた。わかっていた気がした……だってこの人の手は、初めから暖かかった。

だから抱かれる胸にも、心の内と同じ温もりが感じられていたんだ。

目の前の彼の、その隠された本性を知ると、それはやるせなく切ないようにも思えた……。


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