悪いオトコ
「……傷つきたくなくて、そうしてるの?」

彼の本質に気づいて訊いた私に、

「……そうだと、言ったら?」

彼がじっとこちらを見つめ返す。

「……私は、あなたを傷つけたりしない」

ごくっとひと息を呑んで、

「だってあなたのことが、本当に好きだから……」

その瞳に、本心を絞り出すようにも伝えた。

「本当に好き…か」

私の言葉をくり返して、

「……君は、俺に何を望んでるんだよ?」

困惑したようにも口にした。

「……ちゃんと愛し合いたい」

言うと、

「……ハッ!」

と、彼は小さく笑った。

「俺みたいな嘘くさい男を愛して、どうなるっていうんだ…」

自嘲気味に言う彼に、

「……私は、それでもいいと思ったから、付き合ってきたんだもの」

と、話した。

「いいわけがないだろう? 俺が本当には何者なのかもしれないのに」

「……いいわ。好きだから……」

くり返したセリフに、

「……仕方ないな…」

彼が、根負けしたようにも言う。

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