悪いオトコ
不意の感触に手を引こうとすると、

「……いいから」

と、力ずくで引き戻され、もう一方の手ですかさず包み込むようにも握られた。

「……緊張、しなくていいからね」

その仕草と優しげな微笑みに、女性慣れをしている感じが見え隠れする。

……この人は、きっと危険な男なんだろうと感じる。

だけど、自分の手に感じる彼の温もりはやけに暖かくて、握られている手を簡単に離すことができなかった……。


「……今度は、いつ会おうか? また会ってくれるでしょう? 俺と」

飲み終わったグラスを置いて、彼が訊いてくる。

「……えっと、」

また、会うべきなんだろうかと考え込んで、もうこの男とは会わない方がいいんじゃないかとも感じる。

「……ねぇ、もう会いたくない? 俺に……」

私の勘を察したようにそう口を開いた彼の表情が甘く、切なげに歪んで映る。

その顔には、抗えない魅力のようなものが潜んでもいて、

「……また、会ってもいいです……」

私は、ただ惹かれるままにそう答えていたーー。

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