悪いオトコ
……全く隙のない展開から、きっと最初からホテルにでも誘ってくるつもりだろうと思っていた。

けれど彼は、駅までの道のりを歩くと、

「今日は、ありがとう。楽しかったよ」

と、繋いでいた手をあっさり解いた。

外された温もりに顔を上げると、

「俺からも連絡はするけど、君もよかったら連絡してね」

今まで握っていた手で、額にかかる髪を掻き上げた。

目が泳ぐように、そのしなやかな指先を追い、

「…はい」

とだけ、答えた。

醸し出されるような目の前の男の色香に、どう反応していいのかすらもわからなかった……。


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