悪いオトコ
……2度目のデートは、彼から誘われた。

電話で押し切られるような形で待ち合わせが決まって、すっぽかすわけにもいかなかった。

行くべきじゃないと直前まで悩んで、仕方ないような気持ちで出かけた。

どこか得体の知れない危険な香りの漂う彼は、会う回数が増えればそれだけ向こうの思惑通りに引き込まれてしまうようにも思えていた。


「……待たせたかな」

待ち合わせ場所へ歩いて来た彼が、私の顔を見つけて笑顔を作る。

女性なら誰でもが惹かれてしまいそうな笑みに、逆に危うさが浮かんで見える。

「…いいえ、まだ来たばかりです」

常套句で答えると、

「そう? 俺は、わざと少し遅れて来たんだけど、本当に待ってなかったの?」

そんな風にも返されて、慌てたように腕の時計を見た。

時間は待ち合わせ時刻を、10分ほど過ぎていた。

「…なんで、わざわざ……」

思わず呟くと、

「待たせた方が、より会いたいと思ってもらえるかなって」

彼はしれっと口にして、ふっと小さく笑った。


< 7 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop