悪いオトコ
「そう…ですか…」

この人の言葉には、惑わされてはいけないと思う。

「…うん、じゃあ行こうか?」

自然な感じで手が取られる。相変わらず握る手には温もりがあって、言動の軽さとは裏腹に感じられた。

手を繋いで歩いても、なぜだか嫌な雰囲気は何も伝わってこなかった。

「俺と手繋ぐの好き?」

繋いだ手を見やり話す口調はこんなにも軽薄そうなのにと、

「……嫌い…では……」

そこまで言いかけて言葉に詰まる。

「そう? 俺も、紗耶ちゃんとこうするの、好きだよ」

繋ぎ目を口元に持っていき、チュッと唇を寄せる真似をする。

実際、ついていけないようにも感じる。

けれど嫌味さはあまりなくて、ただ無意識に顔が赤らんだだけだった……。


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