平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 そこへエルマがやってくる。

「湯殿の用意が出来ています。上がったら昼食を召し上がりください」

 昼食にしては、二時間ほど遅い時刻である。海に入ったせいで、いつもよりお腹が空いている桜子だ。

「ありがとうございます」

 エルマに案内されたのは、後宮の湯殿だった。
 

 海水でベタベタだった全身がさっぱりして、桜子は湯殿から上がった。

 ザイダが身体を洗ってくれるというのを丁寧に断り、ひとりでのんびり入ったのだ。

 湯殿から上がって大きな布を巻いただけの桜子をザイダは待っており、隣の部屋へ案内される。

「こちらへ寝てください。香油を塗らせていただきます」

 ザイダはにっこり笑って、桜子に寝台を示す。

「こ、香油っ? う、ううん。着替えるだけでいいのっ」

 桜子は首を左右に振って断る。

「いいえ! エルマさまからのご指示です。殿下から、サクラさまは日焼けをしてしまったので香油を塗るように、とのことでございました。女性のことがおわかりになるなんて、殿下はさすがでございますね」

 桜子は頬に手をやる。

 たしかに湯上りだからではなく、熱を持っている。身体のケアをしなかったら、皮がむけて、恥ずかしい顔になってしまうかもしれない。

「……じゃ、じゃあ……お願いします」

 桜子はまな板にのる鯉のような気分で、寝台の上に寝そべった。

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