平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 ダフネ姫とイヴァナ皇后の使者を待たせていたディオンは、身支度を済ませて謁見の間へ入った。

 イアニスやラウリ、ニコも一緒である。
 
 玉座に座ったディオンの前に、イヴァナ皇后の使者の男とダフネ姫が進み出る。

「ベルタッジア国、第三皇子ディオン・アシュアン・ベルタッジアさま。ルキアノス皇帝から勅命でございます」

 使者は片膝を床につき、頭を深く下げる。その隣でダフネ姫は立ったまま微笑みを浮かべていた。

「皇帝からの、勅……命?」

 ディオンの嫌な予感は的中だった。

 勅命は『ダフネ・カッチャを娶り、アシュアン皇妃にすること』だった。

 斜め横に控えていたイアニスが小さく息を呑む。

 そんなふたりの様子を気にも留めず、ダフネは満面の笑みで、一歩進み出る。

「ディオンさまっ。これからディオンさまを支えて、いい妻になれるように努力いたしますわ!」

 以前からダフネ姫はディオンに好意を抱いていた。ディオンの妻になる望みが叶い、天にも昇る気持ちだ。

(ルキアノスは、いったいどういうつもりなんだ……?)

 皇帝から命を狙われているディオンだ。それが、宮殿でもルキアノスの次に権力のあるイヴァナ皇后が可愛がっている姪を娶るようにとの勅命。ディオンは解せなかった。

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