平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
ダフネ姫はディオンの前に両膝をついて、彼の手に口づけを落とす。
「残念ですけど、今日はこれで私たちは皇都へ帰りますわ。それと――」
甘えたように笑みを浮かべて、ディオンを見つめる。
「それと?」
「あの小汚い娘は、今度来訪したときにはいなくなっていますわよね?」
にっこり微笑む姿に、ダフネ姫の腹黒さが見える。以前から、ダフネ姫の性格は把握していたディオンである。
「それは約束しかねる。わけがあって面倒を見ている娘だ」
ダフネ姫はディオンの答えに不満そうであったが、反論はしなかった。
使者とダフネ姫が皇都へ帰っていった。皇都まで馬で二刻ほど。ベルタッジア国の五ヵ所ある領の中で、一番近いのがアシュアン領だ。
「まさか、ルキアノス皇帝がダフネ姫を娶るように勅命を出すとは……予想外でした」
イアニスは重いため息をつく。
「大事にしているイヴァナ皇后の姪か。いったいなにを考えているんだ?」
昨日刺客に狙われたばかりである。
「ディオンさまを殺すのは諦め、取り込もうとしているのでは?」
イアニスの言葉に、ディオンはフッと笑みを漏らす。
「それはないだろう。イヴァナ皇后の大事な姪など、ルキアノスはなんとも思っていない。ダフネを娶らせ、隙あらば狙ってくるはずだ」
五年間も殺されかけているディオンだ。ルキアノス皇帝が考えを変えるとは思ってもみない。
「少し様子を見るしかないな。計画を早めるかは、ルキアノスの出方を見てからにする」
「御意」
ディオンの言葉にイアニスは頭を下げた。
「残念ですけど、今日はこれで私たちは皇都へ帰りますわ。それと――」
甘えたように笑みを浮かべて、ディオンを見つめる。
「それと?」
「あの小汚い娘は、今度来訪したときにはいなくなっていますわよね?」
にっこり微笑む姿に、ダフネ姫の腹黒さが見える。以前から、ダフネ姫の性格は把握していたディオンである。
「それは約束しかねる。わけがあって面倒を見ている娘だ」
ダフネ姫はディオンの答えに不満そうであったが、反論はしなかった。
使者とダフネ姫が皇都へ帰っていった。皇都まで馬で二刻ほど。ベルタッジア国の五ヵ所ある領の中で、一番近いのがアシュアン領だ。
「まさか、ルキアノス皇帝がダフネ姫を娶るように勅命を出すとは……予想外でした」
イアニスは重いため息をつく。
「大事にしているイヴァナ皇后の姪か。いったいなにを考えているんだ?」
昨日刺客に狙われたばかりである。
「ディオンさまを殺すのは諦め、取り込もうとしているのでは?」
イアニスの言葉に、ディオンはフッと笑みを漏らす。
「それはないだろう。イヴァナ皇后の大事な姪など、ルキアノスはなんとも思っていない。ダフネを娶らせ、隙あらば狙ってくるはずだ」
五年間も殺されかけているディオンだ。ルキアノス皇帝が考えを変えるとは思ってもみない。
「少し様子を見るしかないな。計画を早めるかは、ルキアノスの出方を見てからにする」
「御意」
ディオンの言葉にイアニスは頭を下げた。