平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました

「肉の焼き方がちょうどいい。ほら、サクラも食べてみなさい」

　ディオンは手で鶏肉の骨の部分を持って、桜子の口に運ぶ。エルマを除いて、他の三人は微笑ましそうにディオンと桜子を見ている。

　桜子は鶏肉をひと口噛んで、ゆっくり咀嚼する。

「サクラは食べているときも美しい」
「ディオンさま、そんな褒め言葉は嬉しくありません」
「そうなのか？　では、サクラのすべてが美しい」

　ディオンは懲りずに褒める。そこでエルマが呆れたような顔になる。

「殿下、いい加減にサクラさまをお放しくださいませ。ちゃんとお食事ができないではないですか？」

　嫉妬ではなく、 桜子が本当に困っているのを見て進言したのだ。

「エルマ、私はサクラを愛している。片時も放したくないんだ。そなたたちも愛を知れば同じになるだろう」

　エルマの進言もまったく気にせずにディオンは微笑む。

「サクラ、そなたが戦うのは嫌だと言ったが、そなたの身にもしものことがあったらと思い、考えを改めた」
「えっ？」

　桜子は後ろを仰ぎ見て、キョトンとなる。

「身体がなまらないように、鍛錬を許可する。ラウリ、ニコ。交代でサクラに付き合ってくれ」

　ラウリとニコは了解したと頭を下げる。

「ディオンさま、ありがとうございます。あの、武器を竹刀じゃないものにしたいんです」
「違うものを？」

　ディオンは首を傾げる。