平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「はい。竹刀は竹刀同士ならば戦えますが、竹刀と剣では長さも威力も違うので、俊敏に戦えないんです。竹刀をかまえている間にやられてしまいます」

 先日、手合わせをしてくれたニコに、桜子は同意を得ようと伺う。

「ニコさん、そうですよね? 警備兵の方たちと戦ったみたいな剣のほうが今後いいのかなと思って」
「さすがサクラさまです。よくおわかりに」

 桜子は嬉しそうな笑みを浮かべる。

「殿下、サクラさまの言うとおりでございます」
「ニコ、剣で鍛錬をしたいと?」

 鍛錬に賛成したディオンだが、顔を顰める。

「はい。鍛錬用の剣で慣れていただければと思います。そのほうが、万が一のときに身を守れるのではないかと。十分にサクラさまはお強いですが」
「……確かにそうだな。鍛錬用の剣ならば認めよう」
「ディオンさま、ありがとうございます」

 桜子は真剣な表情でディオンにお礼を言った。そんな桜子を見て、ディオンは小さなため息を漏らす。

「出来ることならば、そんな目に遭わせる機会がないように過ごさせてあげたいのだが、そなたの命のほうが大切だ。身を守れるように鍛錬してほしい」

 ディオンは切ない眼差しで見つめ、そっと黒髪に唇を落とした。

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