平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「これはかなり痛むはず。薬を塗ろう」
「……はい」

 以前ほど過保護ではなくなったディオンなので、多少の打撲はザイダに任せている。

 ディオンに付き添われて、桜子は部屋へ戻った。

 
「サクラは頑張り屋だな。綺麗な手が……傷だらけに……」

 椅子に座らせた桜子のまめに、ディオンは薬を塗る。

「ディオンさま、そんな顔をしないでください。怪我をしている私よりつらそうです」

 桜子は反対の左手でディオンの頬に触れた。

 ディオンは端正な顔を微笑ませ、腰を屈めると、桜子の唇にキスを落とす。そこへ扉が叩かれた。

「最近の私たちは、ふたりの時間がなくて寂しい」

 そう言って、扉近くに控えていたザイダにディオンは頷く。ザイダが扉を開けると、イアニスが入ってきた。

「ディオンさま、ダフネ姫が来訪されました」
「……わかった。サクラ、カリスタの元気がないので、会いに行ってほしい」

 イアニスに頷いたディオンは、桜子に頼んだ。

「ええっ? カリスタが? どこか悪化したのですか?」

 桜子はイアニスに視線を向ける。

 以前、身体にお酒はよくないと言われていただけで、どこが悪いのかは知らない。

「息切れがひどいようです。心臓が弱っているんですよ、もう年なので」

 桜子はショックだった。

「病人扱いすると怒るので、サクラさまは知らなかったことにしてください」
「……わかりました」

 桜子は神妙な面持ちで頷いた。

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