平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「話が違うわ!」

 桜子は侵入者に叫んだ。

「見せしめが必要だからな」

 低い声で冷たく言い放った侵入者は、カリスタに剣を向けて腕を切りつけた。

「やめてー!」

 桜子は剣を握る手に力を入れ、侵入者に向かう。黒ずくめの男は一瞬ひるんだが、振り下ろされた桜子の剣を防ぎ、逆に襲いかかる。

 本物の剣で戦ったことがなく、怖い思いもあるが、やらなければやられる。桜子は夢中で剣を振った。

 カリスタは腕の痛みに意識が遠のきそうだったが、今では孫のように大切に思っている桜子の一大事に、なんとか助けを呼ばなくてはならないと、出入口にふらつく足を進める。

 やっとのことで侵入者の剣を防いでいた桜子だが、次の瞬間、腰の辺りに焼けるような痛みを覚えた。

「ああぅ……うっ……」

 ガクッと膝が床につき、もうダメかと思い、ぎゅっと目を閉じた。

 そこで聞こえてきたのは、男の呻き声だった。

 ハッとして顔を上げると、血相を変えたディオンが剣を持って立っていた。剣に血がついている。その剣を床に放り、桜子に駆け寄る。

「サクラ! なんてことだ……!」
「カリスタはっ!?」
「腕を切られたが、意識はしっかりしている」

 そう言いながら、ディオンは桜子の右の腰辺りに慎重に手で触れた。衣装がバッサリ切られており、傷を診る。黄色の衣装には血が滲んでいる。

「傷は浅い……が、かなり痛むだろう?」

 ディオンは愁眉を開いた。


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