平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「……これくらい、大丈夫です」
桜子は期限を待たずにカリスタを襲うよう命令したイヴァナ皇后に、怒りを覚えていた。
ディオンは慎重に抱き上げ、二階の自分の私室へ向かう。
途中、まだ宮殿にいたダフネ姫が謁見の間から姿を見せ、桜子を抱き上げているディオンに驚く。
「まあ! いったいどうしたのですか? 騒がしかったようですが?」
ダフネ姫はなにも知らされておらず、桜子の怪我の原因もまったくわからない。それゆえ、ディオンが大事そうに抱いている桜子に嫉妬をする。
「刺客が入った。その部屋から出ないでくれ」
廊下を歩きながら、ディオンはダフネ姫を見ずに冷たく告げた。桜子を抱き上げて去っていくディオンの後ろ姿に、ダフネ姫は悔しさで下唇を噛んだ。
桜子の傷は、ディオンの診立てどおり浅かった。だが、身体を傷つけてしまったことに、ディオンは後悔の念に駆られている。
「私が剣を許さなければ、サクラが戦いに行くことはなく、このような怪我をすることもなかった」
宮殿を守る衛兵に、気づいたところから一部始終の報告を受けていた。
「そんなことはありません。剣を習っておいてよかったです。もう少しで勝てそうでした」
ディオンの罪悪感が、ひしひしと伝わってくる。
「鍛錬していなかったら、私は殺されていたはずです。だからそんな顔をしないで」
そこへイアニスが現れた。憂慮している顔だったが、ディオンの前に立つと厳しい表情で口を開く。
「ダフネ姫は、皇都にお戻りになりました」
「カリスタの容態は?」
ディオンが聞くと、イアニスは力なく、小さく首を横に振った。
「腕の傷よりも、心臓のほうが……医師はもって数日だろうと……」
桜子の口から小さな悲鳴が漏れる。
「そんなっ! 大丈夫ですよね? カリスタが死ぬなんて、ないですよね!?」
桜子は必死な顔で、イアニスとディオンに問いかけた。
しかし、ふたりはそれに答えられなかった。
桜子は期限を待たずにカリスタを襲うよう命令したイヴァナ皇后に、怒りを覚えていた。
ディオンは慎重に抱き上げ、二階の自分の私室へ向かう。
途中、まだ宮殿にいたダフネ姫が謁見の間から姿を見せ、桜子を抱き上げているディオンに驚く。
「まあ! いったいどうしたのですか? 騒がしかったようですが?」
ダフネ姫はなにも知らされておらず、桜子の怪我の原因もまったくわからない。それゆえ、ディオンが大事そうに抱いている桜子に嫉妬をする。
「刺客が入った。その部屋から出ないでくれ」
廊下を歩きながら、ディオンはダフネ姫を見ずに冷たく告げた。桜子を抱き上げて去っていくディオンの後ろ姿に、ダフネ姫は悔しさで下唇を噛んだ。
桜子の傷は、ディオンの診立てどおり浅かった。だが、身体を傷つけてしまったことに、ディオンは後悔の念に駆られている。
「私が剣を許さなければ、サクラが戦いに行くことはなく、このような怪我をすることもなかった」
宮殿を守る衛兵に、気づいたところから一部始終の報告を受けていた。
「そんなことはありません。剣を習っておいてよかったです。もう少しで勝てそうでした」
ディオンの罪悪感が、ひしひしと伝わってくる。
「鍛錬していなかったら、私は殺されていたはずです。だからそんな顔をしないで」
そこへイアニスが現れた。憂慮している顔だったが、ディオンの前に立つと厳しい表情で口を開く。
「ダフネ姫は、皇都にお戻りになりました」
「カリスタの容態は?」
ディオンが聞くと、イアニスは力なく、小さく首を横に振った。
「腕の傷よりも、心臓のほうが……医師はもって数日だろうと……」
桜子の口から小さな悲鳴が漏れる。
「そんなっ! 大丈夫ですよね? カリスタが死ぬなんて、ないですよね!?」
桜子は必死な顔で、イアニスとディオンに問いかけた。
しかし、ふたりはそれに答えられなかった。