平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 おぼつかない足取りで歩き、数分後、ディオンに案内された場所へ到着した。放心状態の桜子は足に力が入らず、ガクッと地面に膝をついた。

 四つん這いになった形で、手に触れた土と草をギュッと握る。

「お願い! 元の世界へ帰して! この世界を私が来る前に戻してっ!」

 桜子は心から叫んだ。今の桜子は、ここから離れなければならないという一心だ。

「帰してよー!! お願いっ!」

 地面を拳で何度も叩く。

 ザイダの報告で追ってきたディオンが見たのは、悲痛な叫び声を上げる桜子だった。

「サクラ! 止めるんだ!」

 白馬から降りたディオンは、桜子に覆いかぶさるようにして動きを止めようとする。

「離して! 元の世界に戻してっ!」

 もはや痛みは感じず、桜子はディオンの腕の中で暴れた。

「私が来なければよかったのっ!!」

 泣きながら叫ぶ桜子を、ディオンは強く抱きしめる。

「……離して……帰るの!!」

 ディオンの腕に包まれて、少し冷静さを取り戻した桜子だったが、まだ帰ろうとしており、抜け出そうとする。

「ダメだ。放さない。私はそなたに会えてよかった。こんなに幸せな毎日を過ごせたのは、サクラのおかげなんだ」

 ディオンは抜け出せないよう腕に力を入れた。

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