平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「……そうです。この世界で生きていくのが嫌になったんです」
桜子は俯きながら答えた。ディオンのアメジスト色の瞳と目を合わせてしまうと、心を見透かされそうで怖かったからだ。
「私が頼りないんだな?」
ディオンの寂しそうな声に、桜子はハッとして顔を上げる。
「ちが……違いますっ!」
「そうだろうか? 私がそなたを愛しているのを知っているのに、黙って帰ろうとした。あのまま元の世界へ帰ってしまったら……残された私の気持ちを考えてくれなかったのか?」
憤ったような顔を一瞬見せ、ディオンは椅子から立ち上がった。
「私はそなたを愛している。サクラのためなら全力で戦い、守り、思いっきり愛せる。だが、私の心はそなたに届いていなかったようだ」
桜子が初めて見る、憂いに満ちた表情のディオンだった。
「サクラが元の世界へ戻りたいというのなら、毎日でもあの場所へ連れて行く。今は身体を治すことを考えるんだ」
それだけ告げ、ディオンは部屋を出ていった。
ひとり残された桜子は両手で顔を覆った。涙が止めどなく出てくる。
(ディオンさま……)
彼の立場だったら怒るだろうと理解できる。
(私はディオンさまにひどいことをしてしまった……あのとき、ディオンさまのことを考えられなかった……愛しているのに……)
桜子は俯きながら答えた。ディオンのアメジスト色の瞳と目を合わせてしまうと、心を見透かされそうで怖かったからだ。
「私が頼りないんだな?」
ディオンの寂しそうな声に、桜子はハッとして顔を上げる。
「ちが……違いますっ!」
「そうだろうか? 私がそなたを愛しているのを知っているのに、黙って帰ろうとした。あのまま元の世界へ帰ってしまったら……残された私の気持ちを考えてくれなかったのか?」
憤ったような顔を一瞬見せ、ディオンは椅子から立ち上がった。
「私はそなたを愛している。サクラのためなら全力で戦い、守り、思いっきり愛せる。だが、私の心はそなたに届いていなかったようだ」
桜子が初めて見る、憂いに満ちた表情のディオンだった。
「サクラが元の世界へ戻りたいというのなら、毎日でもあの場所へ連れて行く。今は身体を治すことを考えるんだ」
それだけ告げ、ディオンは部屋を出ていった。
ひとり残された桜子は両手で顔を覆った。涙が止めどなく出てくる。
(ディオンさま……)
彼の立場だったら怒るだろうと理解できる。
(私はディオンさまにひどいことをしてしまった……あのとき、ディオンさまのことを考えられなかった……愛しているのに……)