平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 離れなければならないせいで、ディオンを想わないようにしていた桜子だ。

 愛し過ぎれば、つらくなるだけだと。
 
 しかし、今ここへ戻ってきて、ディオンの苦悩と直面し、桜子の心は申し訳ない気持ちと悲しみに襲われていた。

『毎日でもあの場所へ行きましょう』

 ディオンの言葉が脳裏に響く。

(嫌われたほうが……いい。深く愛したら、ディオンさまが可哀想だ……)

 涙を拭いている途中で、ザイダが食事のトレーを持って戻ってきた。

「サクラさま、お目覚めになられてよかったです」
「ザイダ、心配かけてしまってごめんなさい」
「私よりも、殿下が三日間ずっとここにいらしたんですよ。とても心配していらっしゃいました。殿下のお身体が心配になって、イアニスさまも休むように苦言したのですが、絶対にここから離れませんでした」

 ザイダの話に、桜子の胸は引き裂かれそうなほどの痛みを覚えた。

「本当にサクラさまをディオンさまは溺愛されておりますね。ご心配をかけないためにも、たくさん食べてくださいね」

 桜子の膝の上にトレーを置いたザイダは、にっこり笑った。
 

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