平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
政務室の長椅子に横になって休んでいるディオンは、桜子の看病でほとんど眠っておらず、そのせいで眩暈に襲われていた。
そこへ、イアニスが部屋に入ってきた。
長椅子でディオンが目を閉じているのを見て、イアニスは音をたてないように机に向かう。
しかし、気配でディオンは目を開けた。
「起こしてしまい、申し訳ありません」
「いや。眠ってはいない」
「サクラさまがお目覚めになったと聞きました。ホッとしましたね」
イアニスは陰のある表情のディオンに首を傾げる。
「どうかしたのですか?」
「……サクラが良くなったら、この世界へ来たときのあの場所へ毎日行く」
イアニスは、ディオンの話の意味が呑み込めない。
「それは、どういうことで?」
「サクラはここを離れたいんだ」
イアニスの細めの目が大きく見開き、驚く。
「私はサクラの望みを叶えたい。いや。彼女の笑顔のために、そうしなくてはならない。ここはサクラにはつらすぎるようだ」
「ディオンさまは、それでいいのでしょうか……? 納得を? 大事な娘を手放せるのですか?」
たたみかけるようなイアニスだ。
「納得などしていない。だが、私は彼女の幸せを望んでいる。サクラの気持ちを尊重するだけだ」
皇子として周りの者にかしずかれ、今まで過ごしてきた。本来ならばもっと強引に、自分の思うままに命令をすれば、相手は逆らうことなどできない立場である。
だが、小さい頃から母の教えで、周りを見る力を養ってきたディオンは、人の気持ちを優先させてしまうのだ。
そこへ、イアニスが部屋に入ってきた。
長椅子でディオンが目を閉じているのを見て、イアニスは音をたてないように机に向かう。
しかし、気配でディオンは目を開けた。
「起こしてしまい、申し訳ありません」
「いや。眠ってはいない」
「サクラさまがお目覚めになったと聞きました。ホッとしましたね」
イアニスは陰のある表情のディオンに首を傾げる。
「どうかしたのですか?」
「……サクラが良くなったら、この世界へ来たときのあの場所へ毎日行く」
イアニスは、ディオンの話の意味が呑み込めない。
「それは、どういうことで?」
「サクラはここを離れたいんだ」
イアニスの細めの目が大きく見開き、驚く。
「私はサクラの望みを叶えたい。いや。彼女の笑顔のために、そうしなくてはならない。ここはサクラにはつらすぎるようだ」
「ディオンさまは、それでいいのでしょうか……? 納得を? 大事な娘を手放せるのですか?」
たたみかけるようなイアニスだ。
「納得などしていない。だが、私は彼女の幸せを望んでいる。サクラの気持ちを尊重するだけだ」
皇子として周りの者にかしずかれ、今まで過ごしてきた。本来ならばもっと強引に、自分の思うままに命令をすれば、相手は逆らうことなどできない立場である。
だが、小さい頃から母の教えで、周りを見る力を養ってきたディオンは、人の気持ちを優先させてしまうのだ。