平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
桜子はしばらく辺りをウロウロしていた。ディオンと衛兵ふたりは木陰で座って、桜子を見守っている。
(なんか、見ていられるのも嫌だな……)
うろつくこと一刻ほど。座って木陰で休んでいたニコが桜子に近づいてきた。
「サクラさま、少しお休みになられては? 飲み物でも飲んでください」
ディオンの元へ行きづらくて困っていたところへのニコの気遣いに、桜子は頷いた。
ニコが一緒でも、ディオンに近づきづらいことには変わりない。ところが桜子がニコに座るように言われたのは、ディオンの隣だった。
(隣のほうが、顔を見なくて済むからいいのかも……)
ラウリから革袋に入った飲み物をもらい、口へ運ぶ。
「サクラ。病み上がりなんだ。無理はしないように」
ふいにディオンが話しかけてきて、横を見る。彼は桜子を見ていた。
こうしてディオンの美しい顔の細部まで見られる距離は久しぶりで、桜子の心臓がドクッと跳ねる。
「……ディオンさまは、このようなところにずっといては退屈でしょう……。私ひとりでも平気なので……」
サクラの言葉に、ディオンは不機嫌な顔を向ける。
「それで? 元の世界へ帰れたとき、私は見送ることも出来ないのか? もしも、悪い輩に連れて行かれたら?」
「ディオンさま……」
桜子にはディオンの気持ちがわかる。反対の立場だったら、彼のようには振る舞えないだろう。
「だから私がいても、気にするな。毎日違う時間帯にここへ来よう」
「……はい。ありがとうございます……ごめんなさい」
「寂しいが、サクラのことはすぐに忘れてみせよう」
ディオンは微笑みを浮かべた。
(なんか、見ていられるのも嫌だな……)
うろつくこと一刻ほど。座って木陰で休んでいたニコが桜子に近づいてきた。
「サクラさま、少しお休みになられては? 飲み物でも飲んでください」
ディオンの元へ行きづらくて困っていたところへのニコの気遣いに、桜子は頷いた。
ニコが一緒でも、ディオンに近づきづらいことには変わりない。ところが桜子がニコに座るように言われたのは、ディオンの隣だった。
(隣のほうが、顔を見なくて済むからいいのかも……)
ラウリから革袋に入った飲み物をもらい、口へ運ぶ。
「サクラ。病み上がりなんだ。無理はしないように」
ふいにディオンが話しかけてきて、横を見る。彼は桜子を見ていた。
こうしてディオンの美しい顔の細部まで見られる距離は久しぶりで、桜子の心臓がドクッと跳ねる。
「……ディオンさまは、このようなところにずっといては退屈でしょう……。私ひとりでも平気なので……」
サクラの言葉に、ディオンは不機嫌な顔を向ける。
「それで? 元の世界へ帰れたとき、私は見送ることも出来ないのか? もしも、悪い輩に連れて行かれたら?」
「ディオンさま……」
桜子にはディオンの気持ちがわかる。反対の立場だったら、彼のようには振る舞えないだろう。
「だから私がいても、気にするな。毎日違う時間帯にここへ来よう」
「……はい。ありがとうございます……ごめんなさい」
「寂しいが、サクラのことはすぐに忘れてみせよう」
ディオンは微笑みを浮かべた。