平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「おかえりなさいませ。降られる前のご到着でよかったです」
「ただいま。ザイダ」

 桜子はそのまま寝台に行き、ゴロンと身体を横たえる。

「少し休んでから、カリスタのところへ行ってきますね」

 ひとりになって、ディオンのことをちゃんと考えたかった。

「はい。おやすみください」

 ザイダは寝台に留めていた布を垂らす。

 ディオンに想いを馳せたとき、空がピカッと光り、すぐにドドーン!と雷が鳴った。

「きゃーっ!」

 桜子は飛び跳ねるように身体を起こし、耳を塞ぐ。

「ザイダ! そこにいる?」

 薄布の向こうにいつも控えているはずのザイダの返事がない。

「ザイダ?」

 薄布をめくろうとしたとき、向こう側から開かれた。その主はディオンだった。

「ディオンさま……」
「ひどい雷鳴だ。怖がっていると思った」

 ディオンは寝台の上へ乗り、桜子の隣に腰を下ろす。

 以前もこういうことがあり、桜子は懐かしくて小さく微笑む。

「こんなこともあったな」
「はい……これほど美しい男の人に近づくのは初めてで、内心ドキドキしていました」

 そのとき、ものすごい雷が地響きと共に鳴り、桜子は叫んだ。ディオンの腕が肩に回る。

「大丈夫だ。なかなか慣れないな」

 その口調はとても優しい。

「絶対に慣れないです」
「横になって、目を閉じて。連日外出したので疲れているはずだ」

 桜子は素直に目を閉じる。その隣にディオンも守るように横になった。

 ディオンの言うとおり、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積している。

 ディオンの腕の中でいつの間にか眠ってしまい、目が覚めたときにはひとりきりだった。

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