平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
その夜、ザイダが気になることを口にする。
「殿下の具合が悪いようです」
「えっ!? それはいつのこと?」
眠る支度をしていた手を止めて、桜子はザイダを見た。
「夕食を下げに厨房へ行ったときですわ。女官たちが、お熱があると話していたのです」
「そんな……さっきまで……」
(体調が悪いのに、雷を怖がる自分のために来てくれたの?)
桜子はディオンを思いやってあげられていなかったことを悟る。
(ディオンさまは、いつだって私のために……)
「ザイダ、ディオンさまの様子を見てきます!」
桜子はいても立ってもいられず、ディオンの私室へ向かった。
「サクラさま」
ディオンの部屋から出てきたイアニスは、桜子の姿に内心驚く。ラウリとニコから、ふたりの関係はうまく言っていないと聞いていたからだ。
「ディオンさまの具合が悪いと聞いたんです」
「ええ。実は数日前から、疲れで体調が悪かったのです。熱がありまして」
「数日前から……」
桜子は動揺を隠せない。
「それなのに私に付き合うなんて!」
気づかなかった自分もバカだと責めながら、衝動的に扉に手をかけて私室に入った。この部屋に入ったのは久しぶりだった。
居間の奥に、五人が眠れるほど大きな寝台があり、静かに足を進める。
すぐに起こして、『私なんかのために身体を壊すなんて』と文句を言いたかった。
「殿下の具合が悪いようです」
「えっ!? それはいつのこと?」
眠る支度をしていた手を止めて、桜子はザイダを見た。
「夕食を下げに厨房へ行ったときですわ。女官たちが、お熱があると話していたのです」
「そんな……さっきまで……」
(体調が悪いのに、雷を怖がる自分のために来てくれたの?)
桜子はディオンを思いやってあげられていなかったことを悟る。
(ディオンさまは、いつだって私のために……)
「ザイダ、ディオンさまの様子を見てきます!」
桜子はいても立ってもいられず、ディオンの私室へ向かった。
「サクラさま」
ディオンの部屋から出てきたイアニスは、桜子の姿に内心驚く。ラウリとニコから、ふたりの関係はうまく言っていないと聞いていたからだ。
「ディオンさまの具合が悪いと聞いたんです」
「ええ。実は数日前から、疲れで体調が悪かったのです。熱がありまして」
「数日前から……」
桜子は動揺を隠せない。
「それなのに私に付き合うなんて!」
気づかなかった自分もバカだと責めながら、衝動的に扉に手をかけて私室に入った。この部屋に入ったのは久しぶりだった。
居間の奥に、五人が眠れるほど大きな寝台があり、静かに足を進める。
すぐに起こして、『私なんかのために身体を壊すなんて』と文句を言いたかった。