平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「今後のイヴァナ皇后がどう出るか、怖いんです」
「大丈夫だ。私が命に代えてもみんなを守る」

 ディオンは非情なイヴァナ皇后に怒り心頭だが、相手が皇妃という立場では、今のところどうすることも出来ない。

 イヴァナ皇后が送る刺客と戦い、桜子や他の者を守るだけ。そう思うと歯がゆく、怒りで両手を握る拳に力が入った。

「イアニス。警備の配置個所と人数を増やし、泳がせていた密偵を拘束するように」
「御意」

 イアニスが厳しい表情で出ていった。

「サクラ、これから……どのくらいかかるかわからないが、そなたを絶対に守る」
「私はディオンさまが心配です」
「そなたがそばにいてくれれば、力が湧いてくる」

 ディオンは桜子の後頭部に手を置いて、引き寄せる。

「愛している。私の妻になってくれないだろうか」

 ディオンの言葉に桜子は驚いて顔を起こし、まじまじと秀麗な顔を見つめた。

「私がディオンさまの妻に……?」
「そなたの世界では、ひとりの愛する人とでしか婚姻関係は結ばない。わかっているが、ダフネを娶るのは免れないだろう。嫌悪されるのは承知している。だが、私はそなたにしか触れたくない。愛したいのはサクラだけ」

 桜子の瞳が揺れる。ディオンは動揺している桜子の頬をそっと撫でる。

「私がそなたを手放さないことがわかれば、ダフネとの話は、もしかしたらなくなるかもしれない」
「きっと、それはないです。ダフネ姫はディオンさまが大好きですから、イヴァナ皇后に逆らってでも……」

 今までのダフネ姫の行動を見ていれば、ディオンを好きなことは一目瞭然だ。桜子の目に映るダフネ姫は、恋する乙女だった。

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