平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「この先は予測がつかない。それでも、私はあなたを愛している。妻になってくれるだろうか?」
「ディオンさま、今は……返事が出来ません。それはダフネ姫を娶るから……ではなくて、私の気持ちの整理が出来ていないから……」
「サクラ……」

 ディオンに切なそうな瞳を向けられ、受け止めたくなる桜子だが、まだ心の中がごちゃごちゃしている。

「ディオンさま、そんなに時間はかかりません。ディオンさまを愛することには変わりありません」
「……仕方ない。私が性急すぎた。だが、私の気持ちを知ってもらいたかったんだ」

 ディオンは目を細め、愛おしい桜子の額にキスをした。
 

 桜子は剣の鍛錬を再開することになった。

(もっと強くなりたい)

 その気持ちは強いのだが、ニコと庭で剣を交えたとき、恐怖心に襲われた。ニコが桜子に剣を振り上げたが、動けなかった。

「危ない!」

 桜子の鍛錬を娯楽室の窓から見ていたディオンは、身を乗り出して叫んだ。

 剣で防ぐか避けなければならないのに、桜子は金縛りに遭ったようにその場に突っ立っている。

 ニコは驚き、とっさに桜子の頭を外したが、左肩に当たってしまった。

「っ!」

 桜子はその場にしゃがみ込む。

「申し訳ありません!」

 ニコが血相を変えて桜子の元へ行く。ディオンも窓を飛び越えてやってきた。

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