平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「サクラ、怪我は!?」
「平気です。ニコが瞬時に避けてくれたので」

 普通であれば避けられる剣だった。しかし、恐怖心に襲われた桜子は回避できなかった。

「私のせいです。サクラさまを傷つけてしまいました……」

 ニコは落ち込んだような顔になり、桜子は自分のせいなのに気の毒になってしまう。

「ニコさんのせいじゃないです。私が――」
「今日はやめておこう。ニコ、サクラは大丈夫だ。休憩していろ」

 そう言ったのはディオンだった。

「サクラ、部屋へ行こう。肩を冷やさなければ」
「はい」

 以前の過保護ぶりに比べたら、今回のディオンは落ち着いたものだ。桜子はディオンと共に自分の部屋へ戻った。

 
 剣の鍛錬をザイダもそばで見ており、先に部屋へ戻って、冷たい水と布を用意していた。

「脱ぎなさい」
「ええっ!?」

 長椅子に座らされた桜子は目を丸くした。

「脱がなければ肩を冷やすことが出来ない。さあ、早く」

 そっけない口調に桜子は従うしかなく、頬を赤らめながら衣装の袖を引っ張り、左肩を出した。

「赤くなっているが、ニコの機転のおかげで軽い打撲で済んだようだ」
 
 左肩に冷たい布が置かれた。

「ごめんなさい……。ぼんやりしていたみたいです」
「ザイダ。医師に打撲用の塗り薬をもらってきてくれ」

 そばに控えていたザイダにディオンは指示を出し、彼女は退出した。

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