平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「そなたを守るために、一刻も早く私の妻になってほしい」
「……私がディオンさまの妻になったら、皇帝の元へ行かなくていいの……?」

 桜子は以前話してくれたディオンの両親のことを思い出した。皇帝妃が欲しいがために、皇帝はディオンの父親を殺したのだ。皇帝は、そういうことを平気で出来る人間だ。

 ディオンは苦悩の表情を浮かべ、首を横に振る。

「サクラが私の妻にならなければ、アシュアンの兵士たちの士気が上がらない。大義名分が必要なんだ」
「それは……皇帝の兵士と、戦いになるってことなのですか?」

 桜子は事の重大さに眩暈を覚えた。

(なぜ私が……皇帝に? イヴァナ皇后が? 私が邪魔だから?)

 そして異世界から来た自分のために、ディオンはルキアノス皇帝に逆らい、戦おうとしている。

 桜子の胸が詰まり、泣きそうになった。

「愛する人はサクラしかいない。そなたを愛している。どうか妻に」
「私も、ディオンさまを愛しています」
「では、妻になってくれるか?」

 桜子は、はっきり頷いた。

「ありがとう。そなたを危険な目には遭わせない」

 ディオンは桜子の顎に手をかけると、口づけを交わした。

 
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