平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「すべてあの女が仕組んでいたことだなんて、腰を抜かすほど驚いたよ」
「皇帝は、ディオンを息子として愛していたんです」

 ルキアノス皇帝がディオンを見る目は温かかった。なぜ今まで他の者が気づかなかったのか、桜子は不思議だった。

 桜子から見たら、息子への愛情は一目瞭然であったのだ。

(この世界の人間関係は複雑で、そうすんなりいかないのかもしれない……)

「ディオンさまがベルタッジアの皇帝になるんだね。信じられないよ。サクラが皇妃で。私はもっともっと長生きをしなくては」
「はい。ずっと一緒にいてくださいね」

 桜子はもう一度、喜んでくれるカリスタに心を込めて抱きついた。

 
 すべてがいい方向に進んでいる。

 桜子は部屋で、ディオンが戻るまで休息を取っていた。その間、ニコから報告を受けたイアニスも桜子に会いに訪れた。

「心配いたしましたが、本当に喜ばしいことです。すべてのものを好転させ、幸せに導くサクラは女神ですね」

 褒め過ぎというくらいのイアニスに、桜子の頬はピンク色に染まる。

「そういえば……」

 ところが、今まで笑っていたイアニスの表情が、ふいに曇った。

「昨日からダフネ姫が滞在されているんです。ディオンさまを今もお待ちになっております」
「そうだったんですね……イヴァナ皇后のことは……?」

 イアニスは首を横に振る。

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